間違った旅路の果てに正しさを祈る *Reprise
著:ニコリリ
プロローグ 終わりの日記
たった今、ぼくはナイ博士のメッセージ箱を“世界の真ん中”に据え置いてきたところだ。
それからぼくは、黄色と緑の丘を少しだけ登って、湖を見ながらこれを書いている。
あたりは一面のタンポポ、そしてぼくの横には、先の折れ曲がった尻尾を舐めては大きなあくびをしている黒い猫――。
長く奇妙な旅がようやく終わって、日差しは暖かく、そよと吹く風は心地いいのに、ぼくの心は晴れない。
ナイを失い、仲間とはぐれ、傷つきながら辿り着いた、この“世界の真ん中”で、ぼくのなすべきことは終わった。終わってしまった。
これからどうすればいいのだろう?
レムに帰るのか? 敵ばかりが待つあの故郷の街へ戻って、ナイの仇討ちをするのか?
あるいは、はぐれた仲間を追うのか? 彼らそれぞれの“世界の真ん中”を探す、あてのない旅に出るのか?
なんのために? 誰のために?
いずれにしても、なにをするにしても、もうぼくの中にそれを成し遂げるだけの力は残っていない。今のぼくはへなへなだ。燃え尽きたロウソクだ。焼け残った芯の切れっ端だけのぼくに、いったいどんな新しいことが始められるというのだろう。
ぼくは今、ただ願うばかりだ。
ぼくらの運んだメッセージが心正しき人に伝わることを。
そしてどうかその人が、ゴミ除去装置の本当の使い方を見つけてくれますように!
ページの残りはあとわずかだ。最後の一文にエンドマークをつけたあと、ぼくはこれを初めから読み返そうと思っている。
仲間たちとの楽しい思い出、ナイとの出会いとつらい別れの記憶、運命を知った旅立ちの日のあの気持ち、そして血なまぐさい戦いと、しゃべる猫との出会い、暗く湿っぽい船底の日々と、この旅の終わり――、それらすべてが詰まったこの愛しい旅の記録を。
そしたらそれからあとは……、あとは、もうただ眠りたい。
タンポポの匂いに包まれて、横っ腹に小さな友達の体温を感じながら、ただひたすら眠りたい。
ゆっくりと眠りたいんだ。